基隆市中正区中正路391号に位置する水産館は、1934年に創設され、旧称「水産館」として知られています。また、水産講習所も併設されており、日本統治時代の末期において、殖民政府が水産試験と高級漁船乗組員の育成を進める基地として機能していました。2003年1月20日に基隆市の歴史建築に指定されました。

日治時代の北台湾漁業の近代化拠点

漁業と魚産加工業の発展を促進するため、1929年に植民地政府は関連する養殖試験場と製造試験所を統合し、「台湾総督府水産試験場」を設立しました。総場は総督府殖産局に置かれ、分場は台南と基隆に設置されました。同年には「基隆漁港」（現在の正浜漁港）の建設が始まりました。1932年には、基隆支場が総場に改編され、漁撈、製造、海洋調査、化学、飾物の五部門が設置されました。

1934年6月に「基隆漁港」が完成し、その周辺の陸上設備（漁市場、貯氷庫、漁香置場、サンゴ市場、貨物車駐車場、機油倉庫、倉庫、給水所、漁業無線局、売店、共用トイレなど）が整備されました。基隆市の浜町臨港路は、台湾の漁業現代化を促進する重要な拠点となりました。

水産館は漁港近くの浜町53番地に位置し、1934年に建設が開始され、1935年に完成しました。台北州水産会（総督府の支援機関で、漁民の技術と産業知識を支援する法人組織）が資金を調達して建設しました。この建物は、現代的な要素と象徴を含む総合使用のオフィスビルです。館内には、郵便局、水産試験場、台湾水産株式会社の魚市場事務所、請願巡査詰所、水産会基隆市支会、会議室、食堂、理髪室、浴場、簡単な宿泊所、標本室、参考品展示室、特別室、貸出業務などがあり、一、二階に合計39の室内ユニットが設けられていました。

台湾の底引き網漁業とマグロ延縄漁業の漸進的な発展に伴い、漁船の上級乗組員を訓練する必要があります。1936年に、台湾総督府水産製品訓練研究所が設立され、漁労 、水産養殖、製造、水産指導の4部門に分かれています。講習所は水産館にもあります。

市民の請願と漁会からの寄贈により公共文化財に

第二次世界大戦末期には水産館は日本陸軍に徴用され、その後、国民政府に接収され、海軍、水試所、市民の使用などを経ました。1951年には台湾省政府によって基北宜三県市漁会の共有物となり、1954年には基隆市漁会が軍から建物の所有権を取得しました。1954年から1989年まで、基隆区漁会はこのビルを利用し、基隆市の漁民の支援を行いました。

1989年に漁会が八斗子の新しいビルに移転した後、建物は空き家となり、管理不足のため、ウエディングドレス撮影の貴重な場所として利用されることもありましたが、火災の危険もありました。市民団体の訴えによって、2003年に歴史建築—正浜旧漁会ビルとして登録されました。2015年4月20日に漁会から基隆市政府へ寄贈されました。

現代主義様式の歴史的建物

この建物は現代主義のスタイルを採用し、垂直と水平のラインが強調されています。二階建ての鉄筋コンクリート造りで、回字形の平面を持ち、周囲に回廊が配置されています。この配置により、良好な採光、通風、空間使用が可能です。中庭はかつて漁獲の競売が行われた場所で、外壁は黄褐色の十三溝面タイルが貼られ、下部には洗石子で擬石積みの重厚感が表現されています。また、細部には漁業産業のイメージを伝える装飾が施されており、側壁には日治時代の基隆漁市場の棚架との接続跡が残っています。

完成した修復と再利用

2017年に文資法に基づいて歴史的建物の修復と再利用計画が策定され、2019年には基隆市文化局が修復工事を実施し、2021年に完工しました。